3月1日から、就職活動が解禁になりましたね。今年は空前の売り手市場だそうで。うらやましい。私が就活をした1998年は、超氷河期でした。100社くらい資料請求して、50社くらい落ちたと思います。内定が取れたのは、わずか1社。もちろん一も二もなく入社し、10年間勤めました。その後別の会社に転職し、合計13年間、会社員として働きました。
私が勤めていた会社は、2社とも広告の制作会社です。とにかく毎日、忙しかった。終電が当たり前、徹夜もざら、休日出勤もたびたびある。そんな状況でしたが、私はむしろ幸せでした。
仕事が好きだったのもありますが、就活に苦労したことで、「正社員で雇ってくれるだけでありがたい」という気持ちがありました。毎月決まった給料はもらえるし、保険にも年金にも入れる。自分で営業しなくても、会社の名前で仕事が来る。なんて安心、なんてらくちん。フリーランスになりたいなんて、これっぽっちも考えたことはありません。
そしてなにより、友達も少ない、趣味もない、お金もない私にとって、会社は憩いの場所でした。会社にいれば、しゃべる相手もいる、やることもある、お金ももらえる。まさにパラダイス! だから残業も平気でしたし、仕事以外の行事にも喜んで参加しました。一応まわりに合わせて「めんどくさいですよね~」とか言っていましたが、ぜんぜんめんどくさくなかったです。社内の飲み会も仕事の打ち上げも、大好きでした。
とにかくプライベートがスカスカなので、定時なんかで仕事が終わってしまったらすることがありません。時間をただ持て余すのみ。世間的にはブラック寄りの会社でしたが、私にとっては唯一の居場所でした。もし働き方改革で長時間労働が是正されたら、むしろ私は困ったかもしれません(きっと裁量労働制が導入されたと思いますが)。思えば寂しい人生ですね…。でも当時はやりがいを感じていて、十分に楽しかったのでした。
それから時は流れ、私は会社員ではなく、経営者になりました。夫の個人事務所を法人化し、私はまさかの取締役。経営なんてつゆほども考えていませんでしたが、子供が生まれてもう時間を持て余すこともなくなったので、ひとつやってみるかという気になったのでした。
会社を始めてから、経営って大変ね…と思い知りました。特に採用。人を雇用するということは、経費も重いけど、それ以上に責任が重い。前の会社で私が面接した新卒社員が、入社3カ月で辞めてしまったことがありました。当時は「残念やけど、しゃあないか~」と思っていましたが、会社にとってもその人にとっても、しゃあないか~では済みません。今の会社でも、いろいろと反省すべきことがありました。経営の三要素はヒト・モノ・カネと言いますが、ヒトがいちばん難しいですね。人間だもの。
ミスマッチな採用は、本当にお互い悲しい結果になってしまう。そう考えると、個性を塗りつぶすようなリクルートスーツでの就活はどうなのか、という疑問が湧いてきます。「面接」という場ではなくて、素の状態で話せるのが一番なんですけどね。お見合いじゃなくて、自然に出会いたい! みたいな。
これからいよいよ就活が本格化すると思いますが、企業にとっても、学生さんにとっても、良い出会いがありますように。シカトキノコも「働きたい!」と思ってもらえる会社を目指して、日々がんばっていきたいと思います。(ちなみに弊社が目指すのは、限りなくホワイトに近いグレー企業です)
(こんりんざい・せめこ、大阪市東成区)